江戸時代、白沢には宿場が置かれ、とても栄えておりました。
その白沢宿のはずれに、鬼怒川という大きな川があり、
川べりには、大きな杉の木が三本並び立っていました。
その頃、村人の間では、三本杉のキツネのうわさが飛び交っていました。
そのうわさによると、
三本杉の根元に開いたほら穴に、
キツネの親子が住みついているのですが、
そのキツネが、夜な夜な白沢宿に行っては、
人をだましていたんだとか。
ある時、とあるお殿様が、白沢宿にお泊りになっていました。
夜になり、お殿様は、宿場の料理屋へお酒を飲みに出かけましたが、
料理屋のもてなしに、とても楽しくなり、
つい時間を忘れ、気づいたときには真夜中になってしまいました。
夜遅くまで、お殿様の帰りを待っていた家臣たちに、
バツが悪くなったお殿様は、
「三本杉のキツネにだまされた」
とウソをついてしまいました。
そのうち、お殿様の家来たちも、宿場に出かけて遊ぶようになりました。
家来たちは、お殿様をほったらかし、夜遅くまで帰って帰ってきません。
ほったからしにされ、かんかんに怒ったお殿様に、
宿場から帰ってきた家来たちは、口々に
「三本杉のキツネにだまされて、遅くなってしまいました」
と、申し上げたそうです。