かしらなし
昔々、羽黒山を背負ってきた大男のダイダラボウシが疲れきって芦沼と弁財天沼にふんまたぎ、たれ流して溜ったところが「かしらなし」だという昔話があります。
この「頭なし」と呼ばれるところが逆面(さかづら)地内にあります。三〜四百mにおよぶ帯状の湿地帯で、いずこともなく清水がわき出て、別の入口もないので「頭なし」といつの世にか言われるようになりました。
現在は、ヨシやタカナなどの水生植物が生い茂り、周囲には湿地に強いハンの木などが生えています。きわめて水量も豊富で、下流の相野沢・宝井などの水田を潤し、さらに川俣付近の水源地ともなっています。
古老の話しによると、子どものころは付近一帯に樹木がうっそうとして昼なお暗く、一人では恐ろしくて、この地に入ることができなかったといいます。
現在は開墾(かいこん)され広々とした畑地や地下揚水による水田と化しています。戦前は水もきれいで、食虫植物のムシトリスミレなどもみられ、またコイ・フナなどの魚も豊富に住み、釣り人たちの楽しみの場でもあったそうです。