旧暦8月15日(9月中旬)の満月を祝うのが十五夜です。秋晴れの夜空の月は実に美しい。萬葉集にも次の様な歌があります。
熟田津に 船乗りせむと月待てば
潮もかないぬ 今は漕ぎ出な
額田王
意味は「熟田津(にきたつ)でこれから船を海に出そうと月の出を待っていると、満月が出て明るくなって来たし、海の潮の具合も良くなって来たので、さあ船を漕いで出かけよう」今から千数百年も昔の歌ですが満月の美しさに感動する有様は、今も昔も変らぬものです。
現在では縁側に卓袱台を出して、ススキ、柿、栗、サツマ芋、里芋の煮つけと月見ダンゴ、燈明(とうみょう)などをお供えします。子供達はワラ鉄砲、ボウジボと呼ばれるワラで編んだ棒を持ち、各家の庭を打って歩く。このときは「大麦あたれ、小麦あたれ、三角畑のソバあたれ」と唱えごとをしながらたたきます。なぜ庭をたたくのかといいますと、昔は庭中に籾を干したものですが、その大切な庭を掘り起してしまうモグラを追い出すためだとされています。なんとも微笑ましいならわしでした。各家庭を廻ると、どこの家でもお金をもらって、最後にみんなで分けあった様な覚えもあります。
平成4年(1992)9月20日 第272号掲載