花から緑そして雨と季節は移り、今は雨の季節。水辺にはアヤメが目に鮮(あざ)やかに映ります。町の北東部に東下ケ橋(さげはし)の集落があります。東下ケ橋の中心に公民館と隣接して白馬神社があり、境内の一隅に、今回訪ねる題目塔があります。
題目とは経典の題号を指し、日連 貞応元〜弘安5(1222〜1282)は、法華経に釈迦の教えの真髄(しんずい)が在ると説き、法華経の題号「妙法蓮華経」に「南無」(仏の教えに帰依する)を冠して「南無妙法蓮華経」の題目を唱えることを創唱し日蓮宗の実践行とした。
題目塔は俗に「髭題目」と称する日蓮宗独特の書体で、七字題目を表示する。「南無妙法蓮華経」の法の字を除いた六字の筆先を髭(ひげ)のような形に長くはねて書く日蓮の書体の継承で、念仏の静に対する題目の動を示し日蓮の積極的な実践行を表現しています。
東下ケ橋の題目塔は、一見記念碑の様です。銘文は正面に、
「南無妙法蓮華経」
「観清院妙道日常法尼」
「観學院妙随日時法尼」
「昭和八年旧三月十二日」
「大字一同建之」
とあり、南無妙法蓮華経を主とする一辺首題の形式をしています。日常さんと日時さん二人の徳を偲(しの)び、東下ケ橋の一同が建てました。
昭和8年(1933)の旧暦3月12日のことでした。
この題目塔の付近には観音寺(廃寺)があり、関係があると推定できます。
苔(こけ)むす題目塔に手を逢わせて梅雨の晴れ間に東下ケ橋を後にしました。
石造 高さ150cm
平成9年(1997)6月20日 第329号掲載