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路傍の神々(36) 相野沢の弘法大師

 春の陽射しを感じながら、東北新幹線の側道を北へ向かうと相野沢公民館があります。北西側の交差点の一隅に今回訪ねる弘法大師があります。

 

 弘法大師は、真言宗の開祖、空海の諡名で宝亀5〜承和2(774〜835)の平安初期の僧です。讃岐(香川県)善通寺に生まれ、延暦23年(804)に第16次遣唐使に加わり入唐し、帰国後平安京に東寺を賜(たま)わり、高野山に金剛峰寺を開き、真言密教の高揚につとめました。現在でも弘法様とか御大師様と呼ばれ、全国各地で広く信仰されています。

 

 相野沢の弘法大師の像容は、舟形光背に立像で、手には数珠(じゅず)を持った姿が彫刻してあります。

 

 この弘法大師の銘文は、光背部分にあり、正面右側から、

 

「高野山弘法大師」

「新四国八十八ヶ所」

「永井照觀 昭和十二年二月廿八日 行年六十六才」

とあります。

 

 

 

 弘法大師の開いた四国88ヶ所は、一番霊山寺(りょうざんじ)(徳島県鳴門市)から88番大窪寺(香川県長尾町)までの全行程約1160kmの修行の道です。

 

 新四国88ヶ所とは、四国88ヶ所の各札所の砂を持ち帰る「お砂踏み」の習慣から発生したもので、新たに四国88ヶ所とすることから、この弘法大師像の周辺は、「お砂踏み」の場所であると思います。

 

 無事に88ヶ所を巡り終ると、最後に高野山で結願(けちがん)の報告をするための参拝をします。

 

 銘文にある永井照觀さんは、四国88ヶ所や弘法大師を深く信仰していたと想います。

 

 信仰の尊さを感じながら、手を合わせて帰路につきました。

 

 高さ132cm 石造

 

平成8年(1996)3月20日 第314号掲載

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