現在整備中の桜づつみから南へ約1km、鬼怒川の美しい流れを眺めながら進み、堤の内側へ降ります。そこには昭和初期に築かれた、堤防の天端(てんば)があります。その南端に東岡本の水神様の祠(ほこら)が、コンクリートで固められた河原石の台の上にあります。
水神様は一般的に、水源に分布する山の神様と水を利用する所に分布する田の神様の連絡役として存在します。その所在は、水の乏しい所、水の危険な所、水の豊かな所で、この3ヶ所が水神様に出会えるところです。
東岡本の水神様は、連絡役と水の豊かな所、水源としての性格を持っています。
水神様の位置は、豊かな鬼怒川の水を利用した岡本新田(佐孝(さこう)新田)の開発が成功した感謝の気持ちと、新田開発に関連して開削された「佐孝堀」からの伏流水としての湧水が付近にあることなどが関係しています。
水神様のある堤防が築かれた頃、この一帯は「佐孝の桜」として近郷近在の名所となり、臨時の駅が設置され、花見の時期は多くの人で賑わったそうです。
以前の水神様は、祠に造立年月日、関係者などが刻まれていたそうですが、今は台と屋根が残るのみとなってしまいました。
今、水や環境に関心が高まる中で、先人の信仰や文化財に対しても目を向けて欲しいと思います。
基壇部分 高さ120cm 石造
平成5年(1993)6月20日 第281号掲載