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路傍の神々(20) 白沢甲部の馬頭観世音

 江戸時代の初期に、奥州街道第一宿として整備された、白沢宿が歴史的街並みを保全しながら、まちづくりの核として再び 甦(よみがえ) りました。

 

 今回訪ねる馬頭観世音は、白沢宿の九郷半橋の袂(たもと)、河内郵便局の入口にあります。馬頭観世音とは「馬の頭を持つ者」の意味で、観音の変化像です。

 

 仏教の六道輪廻(ろくどうりんね)思想の中で、この観音が畜生道に配されることからも、私たちの生活と馬の結びつきに深く関係していると思います。馬頭観世音は、江戸時代中期以来の経済発展に伴い、全国的に造立され、栃木県を中心に北関東から南東北にかけて多く分布しています。

 

 馬は古墳時代の頃から通信・運輸・交通・軍事・農耕・祭礼など、多種多様に用いられました。

 

 この馬頭観世音は、正面に「馬頭観世音」と、躍動感あふれる文字が疾走する馬の様に刻まれています。左側には「昭和二十九年二月初午 白沢甲部」とあります。昭和29年は(1954)です。

 

 

 河川改修や河内郵便局の工事などで周辺の風景や地形が変化してはいますが、昔からずっと同じ場所にありました。

 

 以前は、馬を川へ入れるためのゆるやかなスロープ(馬入れ)があって、馬を九郷半川で洗ったことが地区の方々の記憶にあります。

 

 馬に対する敬慕の念や馬入れの目印「馬つなぎ」などにも利用されていたと思います。馬頭観世音の隣の河原石は馬つなぎであったと考えられます。

 

 現代の若者は車を大切にしますが、それ以上に馬に対しては限りない愛情を注いでいました。

 

 石造 高さ   107cm

 

 河原石高さ   54cm

 

平成6年(1994)11月20日 第298号掲載

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