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路傍の神々(74) 白髭神社の手洗石

 木陰や水辺が恋しくなり、少し誘惑される季節にふさわしく美しい堀り割りの鯉を眺めながら、奥州街道第一宿の白沢宿を歩いて見ました。

 

 今回は宿中心の高台にある、白髭神社境内、高灯籠(たかどうろう)の下にある手洗石(ちょうずいし)を訪ねます。

 

 手洗石は、水鉢、たらい石、水盤とも呼ばれています。社寺に参詣するときに口をすすぎ、手を洗い身を浄め、新しい気持ちになって尊前に向かう習慣が古くからありました。

 

 手洗石の最古の物は、奈良県奈良市春日山の高山水船で正和4年(1315)の作で、以後箱形の遺物が一般的になり、江戸時代になると多く作られるようになります。

 

 白髭神社の手洗石は、円筒型をしており形式的には珍しいものです。

 

 

 

 銘文は正面に 「文化十一年甲戌年十二月」 「奉獻大廣前」 「願主 菊地佐右之門」 とあります。

 

 文化11年(1814)12月に、神前に手洗石を菊地佐右之門さんが献上したことが刻まれています。

 

 裏面には水抜穴が掘られ、周囲には運搬時に使用されたと思われる綱をひっかけたくびれがあります。現在は使われていないので苔(こけ)むしていますが、風格を感じます。

 

 白髭神社は、江戸時代には現在の西鬼怒川沿いの「宮ノ前」にありましたが、度重なる洪水から明治17年(1884)6月に現在の高台に移転しました。

 

 この手洗石と他の数点が、白髭神社の西鬼怒川沿岸時代を知る貴重な遺物であることを感じました。

 

 高さ 自然石 65cm 石造

 

平成11年(1999)5月20日 第352号掲載

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