宇都宮城の襖絵
(明星院蔵)
藤原宗円以来の歴史を語る宇都宮城は、戊辰戦争により慶応4年(1868)4月19日落城、焼失し城内では藩校・道場、家老の邸宅などが焼失をまぬがれたと言われます。その後焼失しなかった物品は一般に払い下げとなりました。
白沢宿の某家では、中国人物画の描かれた襖(ふすま)を払い下げ軸装しました。この絵は中国、漢代の高祖につかえ大将軍となり名をはせた韓信の少年時代のようすで、彼は貧しい家に生まれ、少年時代しばしば仲間の悪童たちにいじめられましたが、よく耐え忍んだことは「韓信の股潜り」として有名な話が残されています。
現在、子どものいじめ問題がさわがれていますが、中国の昔もいじめはあったようです。江戸時代、武士の学問として儒学(じゅがく)が盛んであったことから、城内にもこのような襖絵が描かれたものでありましょう。
この貴重な襖絵は、某家より先祖供養のため明星院に寄進(きしん)されたもので、現在、大切に保存されています。
昭和61年(1986)3月20日 第194号掲載