夏の日、蝉しぐれの中獅子舞を見学する人々でいっぱいになった境内も今はひっそりとして木枯しが吹いています。
白山神社境内にある弥勒(みろく)寺跡に立つ御堂の本尊、千手観音を今回は訪ねます。
千手観音は観音信仰の中から発生した変化観音の一つで、千本の手、その手に一つずつ千眼を持つので、正しくは千手千眼観自在菩薩(せんじゅせんがんかんじざいぼさつ)といい、千の慈悲の眼、千の慈悲の手で衆生を済度(さいど)するので、大悲観音ともいいます。
多くの場合は、胸元の合掌手を除き、左右に二十手ずつ有する四十手像です。
一つの手で二十五有界の衆生を救うため四十手で千となります。
25×40=1000
多くの千手観音は頭上に十一面を置くために十一面千手観音で、安産を願う観音様とされています。
さて逆面(さかづら)の千手観音の銘文は
右側に「大正十年八月十日」
左側に「石治敬工」とあります。
大正10年(1981)に石治さんがうやうやしくこの像を作ったことが刻まれています。
この像は十六手像で、本町では稀(まれ)です。
弥勒寺については修験道(しゅげんどう)の寺院であることが、少ない古文書から理解できますが、不明な点が多く、今後の研究課題です。
一年の終りにゆく年への感謝を込めて、来る年の期待と共に皆様の平安を願いました。
平成8年(1996)12月20日 第323号掲載